【インドネシア文化の紹介】ジャワの伝統的な結婚儀式

中国・インド・アメリカに次いで、世界第4位のインドネシアの総人口は2億7,500万人を超えています。

インドネシアの国民は多民族で大多数がマレー系です。民族は大きくジャワ、スンダ等約300種族に分類されています。

結婚は人生の中でとても重要なイベントでしょう。インドネシアでは各民族の文化や地域によって、結婚儀式の方法が異なります。

本記事では、インドネシアの人口に占める割合が最も多いジャワ民族(ジャワ島の中部・東部に暮らしている民族)の伝統的な結婚の儀式について簡単にご紹介します。

《プロフィール | ティナ》 インドネシア・マラン出身、日本在住歴12年。日本の文化や漫画が好きで、高校卒業後日本に留学。大学卒業後、某自動車部品メーカーでインドネシア人技能実習生受け入れを3年間担当。現在はフリーランスの翻訳者。

ジャワの伝統的な結婚儀式について

ジャワの伝統的な結婚儀式は王宮に住む王族や貴族間でのみで行われていましたが、ジョグジャカルタ王宮とスラカルタ王宮(ジャワ島の中部)では、イスラム教が現地の文化と融合したことによって、その結婚儀式の方法は徐々に宮殿の外へ広がりました。

一般人でもこの儀式を行うようになり、今ではジャワ人の中で人気があります。

ジャワの伝統的な結婚儀式は、様々な段階に分かれており、すべての段階には深い意味があります。

下記より、重要な結婚式前日と当日の段階について、簡潔にご紹介していきます。

結婚式前日

a.Tarub、Bleketepe、Tuwuhanを飾る

引用:Tarub、Bleketepe、Tuwuhanのイメージ

結婚を祝うサインとして、新婦の自宅の入口に様々な装飾を設置します。

その装飾は、Tarub(アーチ状のヤシの若葉)、Tarubの真ん中に付けるBleketepe(ヤシの熟した葉からの編んだ飾り)、そしてTuwuhan(入口の両サイドに置くバナナの木の茎、稲穂などの様々な植物の飾り)です。

b.Siraman

引用:Siramanのイメージ

Siramanは、新郎新婦が自分の両親の自宅で水を浴びる儀式です。

夫婦になる前に、内面と外面を神聖にする意味があります。また、使用される水は七つの泉の地下水にバラ・ジャスミン・イランイランを加えたものです。

水をかける人数は、奇数ではなければなりません。

一般的には離婚歴のない長老や親戚や両親などの合計7人です。新婦のSiramanの後、残りの水は新郎の自宅に運び、新郎のSiramanを行います。

c.Ngerik

引用:Ngerikのイメージ

Ngerikは、額の周りの細い毛を取り除く段階です。新婦の顔がより輝くようにするだけではなく、新婦の不運を取り除き、身も心も清らかにする意味が含まれます。

d.Dodol Dawet

引用:Dodol Dawetのイメージ

次は、新婦の両親が招待客に対してDodol Dawet(Dawetを売る)をします。

Dawetとは米粉、ヤシ糖、ココナツミルク、パンダナスの葉から作られるインドネシアの伝統的な冷菓です。招待客はコインのような陶器をお金の代わりとして、Dawetを買います。

翌日の結婚式には、多くの招待客が来ることを望むだけでなく、運も一緒に運んでくることも願っているという意味です。

e.Midodareni

引用:Midodareniのイメージ

Midodareniとは結婚式前日の夜18〜24時まで、新婦が自宅の部屋の中にいることです。

この期間に新婦の両親が、新婦に結婚の決意を確認したり、結婚生活に関するアドバイスをしたりします。

Midodareniは、ジャワ語で天使という言葉から由来して、翌日の結婚式には新婦が美しい天使のように変わるという願いが含まれます。

この夜に、新郎は家族と一緒に新婦の自宅に衣装、鞄、化粧品、伝統的なお菓子、果物などのような品物を運びます。

主な目的は、新郎は新婦と結婚する決意を持って健康な状態であることを新婦の家族に示すことです。しかし、その時は新婦に会うことは禁止されています。

結婚式当日

結婚式当日は、新郎新婦や両親の要望に合わせて、自宅でも開催することができます。

招待客が多い場合は大きい会場やホテルで開催します。

a.結婚の契約

引用:結婚契約のイメージ

この段階ではそれぞれの宗教に従い、新郎新婦が宗教指導者、証人、両親、招待客の前で結婚を正式に誓います。

その後、イスラム教の場合は新郎新婦が必要書類や結婚帳に署名して、法律上で夫婦になります。

b.Panggih

Panggihというのは、法律・宗教上で夫婦になった新郎新婦が初めて出会うという意味で、伝統的なジャワの結婚儀式のハイライトです。

この段階もいくつかのステップに分かれています。

●Penyerahan Sanggan
引用:Penyerahan Sangganのイメージ

Sangganとは、新郎の家族から新婦の家族へ渡す品物です。今後の生活において新郎が新婦に対して指示、導き、世話をし、完全に責任を負う意味です。

●Balangan Gantal
引用:Balangan Gantalのイメージ

白い糸で結んだSirihの葉(キンマの葉)を新郎新婦は、3個ずつ、新郎から順番にお互いの「額、胸、ひざ」に投げ合います。

これは、お互いに愛を投げ合うことを表す儀式です。

●Ngidhak Endhog
引用: Ngidhak Endhogのイメージ

この儀式は、新郎は生卵を踏んで、2人の間に子供が恵まれることを望むという意味です。その後、新婦は献身と愛情の象徴として新郎の足を洗います。

●Sinduran
引用: Sinduranのイメージ

新婦の父親が、Sindur布(紅白の布)で新郎新婦の両肩を覆います。そして後ろでは、新婦の母親が新郎新婦の肩を持って、一緒に新郎新婦の席に行きます。

新郎新婦は小指を握り合いながら、前に進みます。

●Bobot Timbang
引用: Bobot Timbangのイメージ

新郎新婦が席に着いたら、まず新郎新婦が新婦の父親の上に座ります。

その後、新婦の母親がこの二人はどちらの方が重いと聞き、新婦の父親は同じだと答えます。

この答えは新婦の父親は、二人とも自分の子供であり、差別をしないという意味です。

●Kacar Kucur
引用: Kacar Kucurのイメージ

新郎は、生計を立てる責任があるという意味を込めて、小銭、米、穀物などを新婦が持つ袋に注ぎます。

●Dhahar Kalimah
引用: Dhahar Kalimahのイメージ

3回ずつ新郎新婦は、お互いにご飯を食べさせ合います。将来、喜びと悲しみの中でも新郎新婦が互いに助け合い、支え合うという意味です。

●Ngunjuk Rujak Degan
引用: Ngunjuk Rujak Deganのイメージ

Rujak degan は、ブラウンシュガーを混ぜた若いココナッツの削りくずで作った甘い飲み物です。

まず新婦の父親がRujak deganを先に飲み、その後、父親は新郎に飲ませて、母親は新婦に飲ませます。

甘いもの(良い出来事の例え)は新郎新婦だけではなく家族全員にシェアしなければならないというメッセージがあります。

●Sungkeman
引用: Sungkemanのイメージ

この最後のステップは、新郎新婦は自分たちを育ててくれた両方の両親に感謝し、過ちを犯したことを謝罪し、将来の幸せな生活を送るための祝福を求めます。

C.披露宴

引用: 披露宴のイメージ

披露宴は、新郎新婦が招待客に対しておもてなしをする機会で、招待客が美味しい食べ物を楽しみながら、新郎新婦の挨拶から様々なパフォーマンスまで披露されます。

招待客の数がとにかく多いです。だいたい200~500名前後出席するのが一般的です。

両親の友人や知人も招待するため、かなりの来客数になるようです。

まとめ

ジャワの伝統的な結婚儀式は、ただ単に男女間で婚姻関係を結ぶだけではなく、両方の家族とも結びつけます。

このため、結婚儀式を実行するのは新郎新婦だけではなく、親や他の家族も積極的に参加します。

紹介した結婚儀式の段階は多くて複雑です。全て行うと、かなりの費用がかかります。そのため、予算に合わせて、複雑な段階を略して結婚儀式を行う若者が多いです。

また、同じジャワ民族でも、地域によって紹介した結婚儀式よりも段階が増えたり、異なったりする場合もあります。