インドネシア人の日本語事情とは【実例付きで紹介】

この記事では、インドネシア人の日本語事情を学習者数や学習理由などを踏まえてご紹介します。

また、日本語を業務で使っているインドネシア人の実例も踏まえて、どんな苦労や喜びを感じながら仕事をしているのか、リアルな声を取り上げました。

ぜひ、インドネシア人の日本語事情を知る参考にしてくださいね。

《プロフィール | 友(Yu)》

フリーランスのライター。2018年、インドネシア中部ジャワPekalongan で1年間マングローブ保全ボランティア活動。Pekalonganへ個人チャリティーを実施や、インドネシア語C級取得となにかとインドネシア好き。

日本語学習者数-世界2位

あまり知られていませんが、インドネシア人の日本語学習者は世界第2位で、約70万人です。

1位が中国100万人、3位に韓国40万人となっています(2018年時点)。

一方で、インドネシアの日本語教育機関数は中国よりも多く約2,800カ所ありますが、教師数は3位韓国よりも4割以下に留まり、学習者が多い割に教師数が少ない状況です。

2014年より高等学校における日本語教育支援制度『日本語パートナーズ』が開始し、20代を中心に日本人がインドネシアへ数ヶ月出向き日本語を教えるなどして日本語教師に一役買っています。

日本語学習ランキング

順位国・地域日本語教育機関数教師数学習者数
1中国2,4352,4351,004,625
2インドネシア2,8792,879709,479
3韓国2,99815,345531,511
4オーストラリア1,7643,135405,175
5タイ6592,047184,962
出典:国際交流基金(2018年度 海外日本語教育機関調査

日本語学習をする理由2選

では、インドネシアで日本語の学習者が多いのは一体なぜなのでしょうか。

インドネシアや中国はそもそも人口が世界1位と4位で母体数が多いです。

しかし、人口第2位のインドや第3位のアメリカが上位にランクインしていないため、人口が多いこといことだけが、日本語学習者が多い理由にはなりません。

理由①|教育課程

インドネシアでは、教育課程の一環として日本語学習を導入しています。

日本語学習者の約9割が中等教育(中学校と高等学校を含む)の課程にて、日本語学習の経験をしていることがわかります。

一方で国際交流基金によると、高等学校では、2012年まで日本語が必須科目となっていましたが、中学校と同様に選択科目となったため、高等学校での日本語学習者が減ったと見解しています。

理由②|サブカルチャー

インドネシア人の多くが日本語学習をする理由には、日本のサブカルチャーに興味をもち、日本語を自然に知っていくインドネシア人が多くいるという背景もあります。

インドネシア人に影響をもたらしている日本のサブカルチャーには、次のようなものがあります。

  • アイドル(JKT48・ジャニーズなど)
  • アニメ(ナルト・ドラえもん・ワンピース・進撃の巨人・他マイナーなアニメなど)
  • 映画(『クローズゼロ』など)

テレビ放送やYouTubeの流入などにより、インドネシア人に日本のサブカルチャーが広く周知されているのでしょう。

実際に、私の周りのインドネシア人は、ジャニーズ好きやナルトが好きな友人がおり、日本人の私自身が「なぜ知っているの?」と驚くほど、日本のサブカルチャーをよく知っています。

逆に、私たち日本人がインドネシアのアイドルやアニメ、映画をどれだけ知っているかと言われれば、おそらくインドネシア人が私たちのサブカルチャーを知っている程の知識量があるとは考え難いのではないでしょうか。

インドネシア人の日本のサブカルチャーに対する高い関心度が分かりますね。

インドネシア人の日本語学習意欲

実際にどの程度のインドネシア人が積極的に日本語を学習しているのでしょうか。

外国人の日本語能力を測る試験として最も有名な「日本語能力試験」の受験者数を見ることで、試験を受験するレベルまで積極性をもって日本語学習をするインドネシア人の数を知ることができます。

次の表は、過去6回分のインドネシアで実施された日本語能力試験受験者数(級別)です。

インドネシアでの日本語能力試験受験者数

実施年月日N1N2N3N4N5
2021年12月1413637171,253540
2021年7月1645136598256
2019年12月7401,8943,8025,8183,957
2019年7月4431,3932,8693,3492,438
2018年12月5891,6483,1153,1833,333
2018年7月3651,2292,2852,1341,833
参照:日本語能力試験(過去の試験データ)

表を見ると、想像よりも受験者数が少ないと感じた方も多いのではないでしょうか。

実際に、各級の受験者数の合計である下記の表をみると、インドネシアより日本語学習者が少ないはずの他国にて、多くの受験者数があることがわかります。

日本語能力試験受験者数上位5ヶ国(2021年12月実施データ)

台湾中国韓国インドベトナム
受験者数45,64444,53731,08813,5658,001
参照:日本語能力試験(過去の試験データ)

このことから、インドネシアの日本語学習者数は多いものの、日本語能力試験の受験をするほどまでに積極性をもち学習する人口は少ないことがわかります。

日本語能力試験の受験者の多くは、日本で就労するためのビザ取得や日本留学のために必要であるという理由で、受験する場合が多いと想定されます。

単に、教育課程での選択肢である場合や、日本のサブカルチャーが好きなインドネシア人であれば、日本語能力試験を受験する動機も少ないため、インドネシア人の日本語学習者の多くは、これらの理由で日本語学習をしていると予想できます。

仕事で日本語を使うインドネシア人の実例

ここまで、日本語レベルをみる指標として日本語能力試験を紹介してきました。

ここからは、実際に日本語を使い仕事をしているインドネシア人2名に、日本語を学び始めたきっかけや、仕事上の苦労や面白さなど4つの質問を尋ねました。

アニメがきっかけで日本語を勉強したDさん

簡単なプロフィール
  • 出身地:西ジャワ州ボゴール地区
  • 日本滞在歴:0年
  • 現在の職業:人事
  • 日本語学習歴:5年ぐらい

1.日本語を始めたきっかけは何ですか?

もともとアニメが好きでした。次第に日本語の文字を読めたらカッコイイと思い、日本語を始めました。

2.どうやって日本語を身につけましたか?

最初は独学で始めて、塾や学校で勉強をしました。

3.日本語の仕事する上で苦労はありますか?

もちろん、あります。漢字を読めない時や会話で知らない言葉が出てきた時です。

4.日本語を使った仕事で面白さや楽しさはありますか?

はい!!!難しいですが、日本語が好きです!やはり、日本人と関係をもって仕事ができることが嬉しいからです。

日本人のワークスタイルを享受したAさん

簡単なプロフィール
  • 出身地:西ジャワ州ボゴール地区
  • 日本滞在歴:5年
  • 現在の職業:カスタマーサポート
  • 日本語学習歴:7年

1.日本語を始めたきっかけは何ですか?

大学で、日本留学プログラムに参加したことがきっかけです。

2.どうやって日本語を身につけましたか?

日本語学校で2年間、勉強して身につけました。

3.日本語の仕事する上で苦労はありますか?

はい。上司や同僚がビジネスの話の際に聞いたことがない言葉がどんどん飛び交うので、理解に少し時間かかります。

4.日本語を使った仕事で面白さや楽しさはありますか?

日本人と仕事を始めたての頃は、仕事の違いにストレスを感じていました。話すことだけでなく、歩くスピードもご飯を食べるスピードも何においてもとにかく速かったです。

月日が経ち、そのような日本人のワークスタイルに慣れ、日本人のワークスタイルも含めて仕事が楽しいです。

今回、ご紹介した2名のインドネシア人に共通した苦労は、会話において知らない言葉が出てきた時でした。

会話においてわからない言葉が出てきた時は、会話の文脈から内容を読み解くことも可能ですが、わからなさそうな場合には、私たち日本人が噛み砕いて教えてあげる場面が多少あっても良いですね。

まとめ

インドネシア人の日本語学習人口は世界2位で、中学校や高等学校では日本語が、選択科目として教育課程に組み込まれています。

また、日本語学習者が多い理由は、教育課程の選択科目の一つが日本語であることや、アイドルやアニメ、映画など日本のサブカルチャーの影響を受け、日本に興味を寄せる人が多いためです。

さらに、実際に日本語を使って仕事をしている2名のインドネシア人は、それぞれきっかけや日本語の習得方法は異なりますが、会話上の知らない・わからない言葉に苦労を感じていました。

その一方で、日本語を使って日本人と仕事をすることを楽しんでいましたね。

この記事を読んで、ぜひインドネシア人の日本語事情を知る参考にしてみてください。