【現地在住者が解説】インドネシア現地の給与事情について

インドネシアは2020年時点で人口2億7000万人、人口のおよそ4分の1の約6400万人が16歳~30歳の若者層です。

現在のインドネシアの平均年齢は30歳程度で平均年齢は少しずつ上がっているが2040年までは人口ボーナス期と言われておりまだまだ成長が見込まれています。

本記事では、今後も経済発展のポテンシャルが大きいインドネシア現地の給与事情について、最低賃金や給与の内容などを中心に紹介します。

《プロフィール | 長野綾子(ながのあやこ)》
インドネシア在住17年。
日本語教師として来イ、その後インドネシア大学BIPA留学。2005年より日系グローバル人材紹介&ビジネスコンサルティング会社にてコンサルタントとして勤務。

現地事情

インドネシア人の若者は「もっとお金持ちになりたい」「バイクや車が欲しい」「自分の家を建てたい」「もっと豊かになりたい」という意欲を持ち貪欲に頑張っている人が多い印象です。

欲がない日本の若者との大きな違いを感じて、私は経験していませんが日本の高度成長期はこんな雰囲気だったのかなと想像します。

意欲ある若者のおかげでぐんぐん成長をするインドネシアですが、一方で所得格差が大きくなってきています。

地域・学歴・勤務する会社(ローカル・外資・日系)により所得は異なっており、日本以上に学歴社会です。そのため、就職できる企業や就けるポジションも学歴に左右されることが多いです。

公立学校の教育水準が高くないため(一部の選ばれた公立学校はエリートを輩出している)私立学校へ入れる親が多い一方で、教育費もピンキリであることから、親の所得格差は子供の教育の差になり、教育の差は就職先の差になり、結果として所得格差を引き起こすという循環となっています。

ただ、ジャカルタとジャカルタ近郊エリアで働く中流層のインドネシア人の所得は右肩上がりでバイク・車はもちろん不動産(1000万円以下の戸建てやマンション)も売れ、海外旅行を楽しむ人たちも増加しています。

日本の観光ビザがオープンになった後は、ツアーやLCCで日本旅行へ行く人も多く今までは遠い・高い国だった日本はすっかり身近な国になっています。

最低賃金

インドネシアの最低賃金は毎年11月ぐらいから各県ごとに発表され、翌年1月から適用されます。各企業はその発表に基づき最低賃金労働者(契約社員や業務委託社員)の最低賃金を定め、また組合と昇給率の交渉を開始することになります。

組合との話し合いが長引き、翌年3月4月ぐらいまでが決定しないケースがあり、その場合は昇給率決定後に遡って昇給分の支払いをする必要があります。

日系製造会社(車・バイク関係)が多いチカランとカラワンエリアはジャカルタよりも最低賃金は高いのが特徴です。生産状況により工場勤務の人たちは残業代が発生することも多いためプラス月1万円~2万円ぐらいの所得を得ている人も多いです。

最低賃金で働いている労働者は高卒、主に工場のスタッフレベル・オペレーター、ドライバー、オフィスボーイ、飲食店などが多いです。

エリア最低賃金円換算
ジャカルタIDR 4,641,85446,000円
チカランIDR 4,791,84447,000円
カラワンIDR 4,798,31247,000円
スラバヤIDR 4,300,47942,000円
ジョグジャカルタIDR 2,153,97021,000円
*1円=102ルピア

なお、駐在員のドライバーは朝・夜・週末の残業が多いことから、月収が10万円を超える人も少なくありません。

年収の考え方

インドネシアにはTHR(Tunjangan Hari Raya)という制度があり、年1回1か月分のボーナスを支給することが労働法で定められています。

支払い時期はレバラン(断食明け大祭)の2週間前までに支払う必要があり、勤務年数が1年未満の場合は、基本給÷12x勤務月数分が支払われます。

THRは会社業績とは関係なく1カ月分、業績ボーナスは別途年1回~2回支払っている企業も多く0.5か月~6か月分と業界により幅があります。業績ボーナスは正社員のみ支払われますが、THRは正社員・契約社員に関係なく支給されます。

なお、インドネシアでは内定・採用通知で給与の提示をする際には手取り(THP=Take Home Pay)で行うのが一般的で所得税は会社が負担を前提としています。所得税は累進課税になっており所得に応じて5%~30%です。

手当について

インドネシアでは、ほとんどの企業が基本給や残業手当以外の手当を支給しています。

交通費手当

交通手当を支給している企業はおおよそ84%。業界別に見ると、製造業と商社が90%以上交通費当の支給があります。

交通手当の相場としては月4,500円ぐらいで、通勤距離に応じて変動にしている企業もありますが、通勤距離・通勤方法に関係なく固定での支払いが多いです。

通勤方法としては、バイク>公共交通機関(GrabやGojekのような配車アプリを含む)>自家用車の順に多く使われています。

自家用車の場合、月曜日~金曜日の朝と夜のラッシュ時はGanjir-Genap(奇数・偶数)という交通規制がジャカルタ市内にはあります。

例えば11月2日の場合は偶数日なので、午前6時~10時、午後は16時~21時の時間帯は、ナンバープレートの末尾が偶数でないと通れない規制がされています。

なお、バイク、タクシー、バス、特別ナンバー(大使館や公務員・政府関係者など)は規制の対象外です。

食事手当

食事手当を支給している企業はおおよそ65%で、現金手当支給は37%、現物支給(ケータリングの弁当など)は30%です。

業界別に見ると製造業の98%、つまりほとんどの企業が食事手当を支給しています。

理由としては、製造業は昼休みが40分~50分と短い会社も多く、工業団地エリアにはレストランや屋台などもないことから会社からケータリングの弁当を支給しているケースが多いためです。食事手当(現金の場合)は月2,800円~6,500円ぐらいと幅があります。

その他手当・ベネフィット

下記は、主な給与手当の例です。

現金手当
  • 役職手当
  • 資格手当
  • 語学手当(英語や日本語など業務で使う語学ができる人)
  • 皆勤手当(病欠・欠勤がなかった人)
  • 医療手当*1

*1.かかった医療費を一旦社員が自分で支払い、領収書を提出すると会社が返金する制度。返金%は領収書の80%~100%に設定、返金年間上限は月収1ヶ月分~2ヶ月分としていることが多い。

現金以外の手当
  • BPJS(インドネシアの社会保障)以外の民間保険*2
  • 車両提供*3
  • COP(Car Ownership Program)*4

*2.BPJSは健康保険・労災・雇用保険・年金の社会保障です。雇用主と労働者の加入は義務とされており、会社負担分と社員負担分の%が定められています。社員と扶養家族も加入する必要があります。

BPJSは最初に最寄りの保健所に行きその後指定された病院へ行くという制度で手続きが煩雑であり、使える病院が限られていることもあり、別途民間の団体保険に加入する会社も多いです。保険掛け金(=保証金)は役職により異なります。

*3.通常マネージャークラス以上に与えられるベネフィットで、車両の提供のほかガソリン代・高速料金として固定で現金の手当を支払うことが多いです。

*4.会社が車を購入・社員に提供し、勤務年数が規定に達するとその車は社員所有の車になる制度です。一般的にはマネージャークラス以上に与えられるベネフィットの一つとなります。

中流層の所得

今一番勢いのあるのは、平均所得6万円~20万円ぐらいの中流所得層です。

大卒・ホワイトカラー・ジャカルタで勤務する人は新卒で5万円ぐらいから、有名国立大学卒の専門生(会計経理や理系のエンジニア)や語学力(英語・日本語)により6万円ぐらいからのスタートです。

特に、IT・情報系の新卒はニーズが高く7万以上からのスタートの人もいます。

インドネシアは日本と違い1社で長く働くという慣習はなく転職をしてキャリアアップ・給与アップをしていくという人がほとんどです。

20歳代で2社~3社、30歳代で1社~2社、30歳後半~40歳前半に転職し最終的な落ち着き先を決め定年まで働くというキャリアが一般的です。

インドネシアでの年齢別の給与水準は次の表のとおりです。

年齢給与役職
20代前半~20代後半IDR 5,000,000~IDR 8,000,000
(49000円~78000円)
スタッフ~
スパーバイザーレベル
20代後半~30代半ばIDR 8,000,000~IDR 12,000,000
(78000円~98000円)
スーパーバイザー~
アシスタントマネージャーレベル
30代半ば~40代前半IDR 12,000,000~IDR 20,000,000
(98000円~147000円)
マネージャー~
シニアマネージャーレベル
40代前半以降IDR 20,000,000~
(147000円~)
シニアマネージャー以上
(役員を除く)

インドネシアでは、55歳~56歳を定年としている企業がほとんどで再雇用制度はほとんどなく、45歳を過ぎての転職はマネージャー(部長)~Director(役員)などの役職でなければかなり難しくなります。

まとめ

インドネシアは教育の格差、所得の格差、地域の格差が大きくひとまとめに説明するのは難しい一方で、間違いないこととしては中間層といわれる人たちの所得は上がり生活水準も向上している点です。

コロナ下、失業者が増えた時期もありましたが、車・バイク業界、日用品・製薬の製造会社、サービス、IT系も売り上げはコロナ前の水準に戻ってきています。特にEC関連とテック系スタートアップ企業はコロナ下にもそれぞれビジネスを大きくし雇用も生まれました。

一方、コロナの2年間でWFH(Work From Home)がすっかり定着したこともあり、今までとは違う働き方をしたいと考える人が若者を中心に増え、会社勤めを辞め時間や場所に縛られないマイクロビジネスを始める人が多くなりました。

インスタグラムやTokopediaなどで食品や商品を販売したり、YoutubeやTiktokを投稿しスポンサーを得る、オンライン教育プラットフォームの発達で自分の好きな事や得意な事を自宅にいながらオンラインで教えることができるようになり、今までにはない職業の選択肢が広がっています。

コロナ前も副業をするのが当たり前の文化ではありましたが(企業も承認しているケースが多い)、会社勤めをしながらマイクロビジネスで副業する人は以前より増え、個人の総所得は確実に上がっています。