マンデリンコーヒーは、インドネシアで栽培された豆の商標(ブランド名)を指し、その精製方法や味は個性的な特徴を持ちます。
実は、インドネシアは世界4位のコーヒー生産国ですが、日本のコーヒー豆輸入量のうち約6%に留まっています(2020年時点)。輸入国1位のブラジル(約30%)や2位のベトナム(約26%)と比べると,日本国内でインドネシアコーヒーはそれほど流通していません。
しかし、マンデリンコーヒーは世界的に名の知れたコーヒーブランドで、19世紀半ばより始まった歴史あるコーヒーです。
この記事では、個性と歴史あるマンデリンコーヒーの特徴をご紹介します。ぜひマンデリンコーヒーを飲む時の参考にしてくださいね。
《プロフィール | 友(Yu)》
フリーランスのライター。2018年、インドネシア中部ジャワPekalongan で1年間マングローブ保全ボランティア活動。Pekalonganへ個人チャリティーを実施や、インドネシア語C級取得となにかとインドネシア好き。
生産地ースマトラ島
マンデリンコーヒーは、インドネシアのスマトラ島北部とアチェ州で生産されています。スマトラ島は、マレーシアやシンガポールのあるマレー半島の西隣に位置する島で、アチェ州・北スマトラ州・南スマトラ州など計10州の行政地区で成り立つ島です。
インドネシア国内で有数のコーヒー産地であるスマトラ島は、2021年の州別コーヒー生産量では、スマトラ島5州が上位を独占。全体生産量765.415tのうち68%がスマトラ島の生産であり、スマトラ島は国内トップのコーヒー生産地といえます。
【2021年インドネシア国内のコーヒー生産量(州別、t)】
1位 | Sumatra Selatan(南スマトラ州) | 188.760 |
2位 | Lampung(ランプン州) | 115.689 |
3位 | Aceh(アチェ州) | 73.674 |
4位 | Sumatra Utara(北スマトラ州) | 74.512 |
5位 | Bengkulu(ブンクル州) | 69.861 |
6位 | Jawa Timur(東ジャワ州) | 48.675 |
歴史ー約150年以上続く
また、マンデリンコーヒーはマンデリン族が栽培を始めたことでマンデリンという名が付いたと言われ、19世紀半ばから始まったとされています。
そもそもインドネシアにはコーヒーの木が自生していたわけではありません。1619年にオランダによってコーヒーの苗がジャワ島ヴァタヴィア(現在のジャカルタ)に持ち込まれ、コーヒー栽培が始まりました。
品種ー地域品種
マンデリンコーヒーの品種はアラビカ種ですが、スマトラ島固有の地域品種が含まれます。そもそも、コーヒーは基本的にアラビカ種とロブスタ種の2種類に分類されており、それぞれの品種によって味が違いますが、マンデリンコーヒーは、地域品種故に個性のある味わいになっています。
味ー苦味とコクのある味
しかしマンデリンコーヒーが個性ある味を特徴とする理由は、地域品種意外にも理由があります。というのも、スマトラ島の地形が関係しています。生産地であるスマトラ島は、バリサーン山脈が1700kmにわたって島を縦断しており、火山灰土壌は肥沃な土壌とされ、コーヒーの味わいをさらに豊かにしているのです。
具体的にその味は、
- 酸味が少なく苦味とコクが強く
- スパイシーな風味
をもち合わせています。
また、マンデリンコーヒーに限らず言えることですが、ミャンマーやタイなど東南アジアのコーヒー全般的に、ハーブやスパイスの香りや強いコクを特徴に持っており、ミルクとの相性が非常に良いです。
精製ースマトラ式
このように、肥沃な土壌や地域品種によって個性的な味わいとなるマンデリンですが、マンデリンコーヒー最大の特徴は精製方法にあります。
その精製法はスマトラ式と呼ばれており、通常の精製方法には無い2回の乾燥をさせて精製します。
スマトラ式の他にコーヒーの精製方法には、
- ナチュラル式
- ウォッシュド式
- ハニーウォッシュド式
があり、3つの精製方式は1回乾燥となっています。
では、なぜスマトラ式は2回乾燥をするのでしょうか。理由はインドネシアの気候にあります。熱帯雨林気候に属するスマトラ島では年間降水量が多いため、一度に長い日数で乾燥をする環境ではないのです。そのため一度に乾燥をするのではなく、乾燥を2回に分け、雨を回避して精製を実現させています。(ごく稀にナチュラル式をとるマンデリンコーヒーもあります。)
また焙煎は、深煎り(フレンチロースト)をおすすめします。先に述べたように、マンデリンコーヒーの味わいはコクと苦味を特徴とするので、焙煎を深煎りにすることでよりその特徴を味わえるからです。
おすすめの飲み方3選
それでは、マンデリンコーヒーのおすすめの飲み方3選ご紹介します。実際に私もマンデリンコーヒーをよく飲みますが、やっぱりおすすめはカフェ・オ・レか、カフェ・ラ・テです。ミルクの相性の良さは他産地のコーヒーでは物足りない!と感じてしまうほどの美味しさです。
まずはストレート
本来のマンデリンコーヒーの味を楽しむなら、ペーパーや布でドリップをしてストレートで飲むことをおすすめします。カップからはスパイシーな風味、飲めば強い苦味とコクを味わえるでしょう。
深煎り豆の場合、お湯の温度を高めで尚且つ抽出時間を長くするとより苦味の強いコーヒーになります。どの程度抽出するかは味の好みによりますが、個人的には、お湯の温度は低め・抽出時間は短めの方が美味しいと感じます。
ミルクとの相性抜群のカフェ・オ・レ
ストレートは苦手な人だけでなくとも、ぜひ試して欲しい飲み方がカフェ・オ・レ。ドリップで抽出したストレートよりも濃く抽出し、お好みの量でミルクをいれます。ぜひミルクとの相性の良さを楽しんでみましょう。
エスプレッソでもOK!カフェ・ラ・テ
エスプレッソマシンがある人は、エスプレッソとして抽出を行い、ミルクとの相性を味わってみてください。
インドネシアのコーヒー文化
ここでは、インドネシアのコーヒー文化も合わせてご紹介します。
インドネシア国内では、
Mau ngopi?(コーヒーを飲む?)- Mau. (飲む。)
という会話を耳にします。
世界最大イスラム人口のインドネシアでは、日本のようにお酒を飲む習慣が無いため、代わりにコーヒーを飲みながらおしゃべりをする習慣があります。またインドネシア男性に多く言えることですが、よくコーヒーを片手にタバコを吸っている姿を目にしますね。
飲み方はストレートですが、たっぷりの砂糖を入れます。これは、かつて良品は輸入されており、国内には廉価なコーヒーが出回り、ストレートでは美味しくなかったため砂糖を入れるようになった名残と言われています。現在では、道端で売られているコーヒーはインスタントコーヒーが大半を占める一方で、カフェや珈琲専門店に行くと上質なアラビカ種のコーヒーを飲める機会もあります。
まとめ
マンデリンコーヒーは、スマトラ島のマンデリン族が栽培を始めたことでマンデリンコーヒーという名前がつきました。また、マンデリンコーヒーの精製は、熱帯雨林気候で年間降水量の多いため豆の乾燥を長くできないため、独自のスマトラ式精製で乾燥を2回行います。
その味わいは、バリサーン山脈が連なり火山灰土壌の肥沃な土壌という栽培環境とアラビカ種の中でも地域品種故に、強い苦味とコクやスパイシーな風味の個性ある味となっています。ミルクとの相性も非常に良く、ストレートだけでなくカフェ・ラ・テやカフェ・オ・レも美味しいです。ぜひ、マンデリンコーヒーを飲んでみてはいかがでしょうか。