出張でのインドネシア渡航時に気を付けること

インドネシアには旅行・出張・留学などいろいろな目的でいらっしゃる方がいると思います。

本記事では、初めてインドネシアに出張する方を想定して、渡航準備・渡航時に気を付けることをお知らせします。

《プロフィール | 長野綾子(ながのあやこ)》
インドネシア在住17年。
日本語教師として来イ、その後インドネシア大学BIPA留学。2005年より日系グローバル人材紹介&ビジネスコンサルティング会社にてコンサルタントとして勤務。

持ち物編

服装

インドネシア年間通じ27~33℃の熱帯気候です。トロピカルなイメージが強いからかノースリーブや半ズボン、薄い生地の服、サンダルなどをおもちになる方が多いのですが、実はモール、レストラン、オフィスの中はエアコンがかなり強く効いて寒いことが多いです。

天気が曇りや雨の日はもっと室内は冷えます。また、南国リゾート地のイメージでつばの広い帽子やサングラス、女性はリゾート系ワンピースをもってくる人もいますが、バリ島などのリゾート地であればよいのですが、ジャカルタでは外国人丸出しで、かなり浮くのでやめた方が無難です。

ホテルにプールが付いている場合も多いので、水着とビーチサンダルを持参すると、プールを楽しむこともできます。

オフィスでの服装

男性は半そで、または長袖のカッターシャツ、スラックス、革靴。

会社の雰囲気によりますが、女性は長袖のブラウス、薄手のニットなど。会社によってはポロシャツやスニーカーでも大丈夫です。

オフィスビル内はかなり寒いことがあるので、上着は裏地のついたジャケット、下はウールが混ざった生地のパンツやスカートという春・秋スタイルが無難です。

それでも寒い時があるため、女性でスカートを履く人はひざ掛け・肩にかけられるストールがあると便利です。

女性でストッキングを履く人は替えを必ずもってきましょう。インドネシアの女性はストッキングを履く習慣があまりなく(基本素足が多い)特に手に入りにくいので女性の方は替えを多くもってきたほうがよいです。

私服

モールやレストランなど室内で過ごす場合はクーラーが効いているので、上着・羽織りものが必需品です。

休暇・観光等で日中外で活動する場合は暑いのですが、日差しも強いので、実はノースリーブよりも薄手のUVカット機能のある薄手のパーカー、さらっとした生地の長ズボンかスカートなどを着ていた方が直射日光をうけず涼しく日焼け予防にもなります。

私服に何をもっていくか迷ったら男女共に、ジーンズもしくはコットン素材の長ズボン、Tシャツ、薄手のパーカーやカーディガン、スニーカーであれば大体どこに行くにも問題ありません。

肌の露出を避ける

冷房除けと日焼け予防という意味以外で、インドネシアはイスラム教徒の多い国になりますので、肌の露出は男女ともに避けた方が無難です。

女性ばかりが肌の露出について言われていますが、実は男性もノースリーブと半ズボンはあまり好まれない傾向にあり注意が必要です。

露出が多い服では観光でモスクに入りたくても入れないケースもあります。

ドレスコード

インドネシア(特にジャカルタ)のホテルや、少し高級なレストランやバーではドレスコードがあります。

これらの場所へ行く機会がある場合は、少しフォーマルな服を準備しておきましょう。

基本的に、オフィスに行く服と同じ(長袖のシャツ、ジャケット、長ズボン、革靴かきれい目のスニーカー)で大丈夫ですが、場合により女性は少しフォーマルなワンピースなどを準備したほうが良いかもしれません。

その他

ドリンクボトル(ペットボトル)

外に出ると暑いので、水分補給は必要です。ペットボトルのミネラルウォーターをもって外に出ましょう。

インドネシアでは、Myウォーターボトルを持ち歩くのが一般的になっています。オフィスにはウォーターサーバーがあるのでなくなった場合には、自分のボトルに補充して飲んでいます。

ペットボトルの水は30円ぐらいと安いのですが、日本のように自動販売機がなくどこでもすぐに購入できませんので、水は持ち歩いたほうが無難です。

コンビニも都市部はありますが、24時間営業ではありません。

クレジットカード

特に、ジャカルタは現金を使う場面がかなり減っています。クレジットカードかEマネーを使うことがほとんどなので、現金は1万円ぐらいを換金して持ち歩けば3日ぐらいの滞在は全く問題ありません。

最近は、現金を受け付けていないお店も増えてきているので入店の際に注意が必要です。Eマネーはアプリをインストールして使えますが、どうしても帰国までに使い切れないことはあると思います。

クレジットカードは、VISAがあればどこでも問題なく使えます。JCBも日本食レストランなどで割引があるお店がありますがジャカルタ以外の地方に行くと使えないかもしれません。

Eマネーをインストールしたい場合は、OVOかGOJEKのGOPAYが良いと思います。

頻繁に出張に来る方は、インストールして入金しておいても良いかと思います。

タクシーは、クレジットカードが使えず、現金かEマネー(GOJEKと提携)なのでタクシーを多く使う人は現金も必要です。

なお、現金はあまりきれいではないので日本で使っている財布ではなく旅行用の財布かジップロックに入れて使うのがおすすめです。

ウェットティッシュ

インドネシアの都市部にあるモールなどのトイレは、比較的綺麗な場合も多いので、問題はありません。

ただ、少し小さいレストランや地方に行くと、普通のティッシュでさえないことも多いです。

コロナ下でもあり頻繁に手を拭いたりとウェットティッシュはかなり重宝するので常に持ち歩きましょう。

変圧器とコンセント(プラグ)

インドネシアはプラグB・C・SE型併用のマルチ型がおすすめです。

基本的にはC型が多いのですが、ホテルなどはB/SEを採用しているところもあります。

電圧は、220V(日本は120V)なので変圧器が付いていない電化製品は直接使えませんので、変圧器が必要です。

アダプターに100-240Vと書いてあるものであればそのまま使えます。

折り畳み日傘兼雨傘

日差しが強い時にも使えますし急な雨にも対応ができます。

南国特有のスコールは傘ではどうしようもないレベルの降り方なので、傘をさしてもびしょびしょになりあまり意味がありません。

スコールは1-2時間で収まることが多いので移動はあきらめてどこかカフェなどで雨宿りして待ちましょう。

お土産

インドネシア人社員にお土産は、忘れず準備してください。

日本からのお土産はかなり喜ばれます。ただ、イスラム教徒の方がいる場合は成分表をよく確認してから購入して持っていきましょう。

ショートニング(クッキーやケーキに多い)やポークエキスなどが入っているものはNGです、気を付けましょう。

冷房で体を冷やしたり、食べ物にあたることはあります。腹痛・下痢の薬、解熱剤は必ず持ってきましょう。ほこりが日本よりも気になると思いますので、目薬やうがい薬も持っておくと便利です。あと、日差しが強いので日焼け止めもお忘れなく。

コンタクトも汚れやすいですし、衛生的に安心なワンデーがおすすめです。蚊は多いので、虫よけスプレーも持参するのがおすすめです。

行動編

マナーとタブー

インドネシアでは左手は不浄の手とされています。そのため、インドネシア人で左利きの人は少なく、おそらく子供の時に右利きに教育されるのだと思います。

この習慣は、イスラム教の習慣と言われているのですが、相手の宗教を問わず左手は使わない方が無難です。

不浄だと言われる理由は、排せつ時に左手を使って洗っていたためです。現在はウォシュレットが普及していますし、手で洗っている人はいないと思いますが、習慣としては残っていますので守ったほうがよいです。

相手に物を渡すときにも、できるだけ右手を使いましょう。どうしても右手がふさがっている場合は左手で渡してもよいのですが「左手でごめんなさい(Maaf tangan Kiri)」と言ってから渡したほうがよいです。

インドネシアでは昔から手で食事をする習慣があります、もちろんスプーンとフォークを使うのが今は一般的なのですが、手で食べることも頻繁にあります。

日本から来た人はびっくりすると思いますが、白ご飯とおかずをぐちゃぐちゃと手で混ぜながら食べるのはマナー違反ではありません。

ただ、手で食事をするときは絶対に左手は使いません。みんな右手だけで器用に食べていますので、ぜひチャレンジしてみてください。

人前で強く注意する・怒る

最近は、日本でも同じように言われていると思いますが、人前で注意をしたり怒ることはタブーとされています。

インドネシアは「恥」の文化であるため、人前で怒られることで恥ずかしい思いをして、プライドを傷つけられたと考えます。

何か注意をしないといけないことがあれば、会議室などに呼んで話をした方がよいです。

金曜日のお祈りの時間

イスラム教徒の男性は、金曜日はモスクに行き集団礼拝をします。

そのため、ほとんどの会社は金曜日の昼休みを11時半~13時に設定しています。

普通の礼拝は、モスクに行かず会社の礼拝所や会議室でお祈りしてもよいですし、礼拝時間もある程度猶予があるのですが、金曜日だけは他の人と一緒にモスクで礼拝する必要があります。

金曜日のお祈りの時間に、ミーティングを入れたり、仕事を依頼したり、ドライバーさんに運転を依頼するのは避けましょう。

イスラム教の女性は、モスクに行く必要はないのですが金曜の集団礼拝時間は基本休憩と思ってスケジュールを組みましょう。

握手

インドネシアでは、握手の文化が根付いています。そのため、出会ったとき、別れる時に握手をします。

少しインドネシアの握手で特徴があるなと思うのは、握手した自分の手を自分の胸に当てる行為をします。

これは、お会いできて光栄だという気持ちを心にも届けている感じなのだと思います。相手がそうしている場合は真似してぜひやってみてください。

イスラム教徒の人は異性との握手を好まない人がいますので、手を出しても握手に応じず、合唱だけする人がいますが気にしなくて大丈夫です。相手が合唱をした場合は自分も合唱をして返しましょう。

女性同士は握手したのち、ハグして頬っぺたを合わせてチュッと音を立てる挨拶をします。

日本人は不慣れで恥ずかしいと思いますので真似する必要はないですが、チャレンジしたい人は、握手→ハグ→右の頬を合わせる→左の頬を合わせる→握手の手を放すの順番でやってみましょう。その方との距離感がぐっと縮まる気がします。

チップ

インドネシアでは、基本チップの制度はありません。ただ、1,950円の食事をしたら2,000円を支払っておつりは置いていく、タクシーで735円であれば800円渡しておつりはもらわないというような習慣はあります。

あまり細かいお金を気にせずに丸めて支払うというのは知っていた方がよいです。

インドネシア人社員との食事では、日本人が支払うことが多いと思いますが、この習慣は知っておいた方がよいです。面倒な人はクレジットカードを使いましょう。

その他

誕生日の習慣

インドネシアでは、誕生日の人がみんなに食事を振る舞う習慣があります。

オフィスでも「今日は私の誕生日です」とみんなにドーナツ、ピザ、軽食を振る舞うのが一般的です。

家族や友達同士で、誕生日パーティーをするときも誕生日の人が食事代を支払います。インドネシアにいる間にご自身の誕生日を迎えたときにはぜひ周りの人に食事やおやつなどを振る舞ってあげてください。

割り勘文化はあまりない

インドネシアでは、年上の人・立場が上の人(男女問わず)が年下の人の分を支払うという習慣があります。

同じ年ぐらいの友達同士の場合は割り勘していることもありますが、日本のように1円まで割るということはまずなく、まとめて誰かが支払いその人に自分が食べた分+α分を渡すという感じです。

インドネシアへ行くと、部下やインドネシア人の知り合いの分を支払う機会が多いと思いますが、所得の差もありますし外国人ということもあり、スマートに全額支払ってあげましょう。

断食をしている人への配慮

ラマダン以外の時期でも、イスラム教の人で断食をしている人がいます。

月曜・木曜の断食をしている人、もしくは前回のラマダンでできなかった分の穴埋めで断食をしている人などです。

断食という意味のプアサ(Puasa)という言葉を覚えておいて、もしインドネシア人の社員の方や周りの方で断食をしている人がいたら、目の前で飲食・喫煙しないなどの配慮をしてあげましょう。

渡航前に準備しておいた方がよいこと

ワクチン証明書アプリダウンロード

Pedulilindungiというアプリがありますので、こちらは携帯に必ずインストールしておきましょう。

現在、入国のためには2回分のワクチン証明が必要です。日本で受けたワクチンを反映することも可能ですが、うまくいかなかったり申請の時間が足りない場合はレターを持参しましょう。

インドネシアで、国内線に乗る場合は3回分のワクチン証明が必要になりますので、2回しか受けていない人は3回目を受けておきましょう。

端末識別番号(IMEI)の登録

日本の番号をそのまま使う場合は問題ないのですが、インドネシアに滞在している間にインドネシア通信会社発行のSIMを使う場合は税関登録が必要になっています。

手続きは専用フォーム(https://www.beacukai.go.id/register-imei.html )で端末情報を入力してQRコードを発行します。

そのQRコードを到着空港の税関で提示し登録手続きを行います。その後48時間以内に使用可能となります。以下の場合は登録不要です。

  • 90日以内の短期滞在者
  • Free Wi-Fiに接続して使用する
  • 日本の通信会社(SIM)のままローミングして使う
  • デザリングで使う

インドネシア(ジャカルタ・バリ島など)はレストラン、カフェ、モール、オフィスの中は、Free Wi-Fiが使えることが多いので、短期間の滞在であれば不便はないと思います。この辺りは日本よりも旅行者には便利です。

電子税関申請書(e-CD)アプリのダウンロードと登録

以前は黄色い紙に記入して税関で提出していましたが、現在は電子申請になっています。税関申請書(https://ecd.beacukai.go.id/)をダウンロードして記入・登録をするとQRコードが発行されますので、到着空港の税関でスキャンするだけです。

まとめ

インドネシアへの渡航が初めての方は、宗教・文化・気候などが違い、いろいろ心配な事が多いと思います。

薬なども、日本から持参するのを忘れたとしても、ジャカルタであればほとんどのものは手に入りますし、インドネシアに来て買い足すことは問題なく可能です。

マナー・タブーについても、インドネシア人は外国人にとてもやさしく寛大で、海外との文化の違いを理解しているので、ちょっとしたことで怒ったりはしません。

ただ、外国人の私たちも守ったほうがもちろん良いので、タブーやマナー、文化や習慣を知っていた方が滞在をより楽しめると思います。