知っておくべきインドネシアの文化のタブーとは?

インドネシアについて、日本ではどれくらいの情報が知られているでしょうか?

20年前、私が初めてインドネシア人たちと関わり始めた頃は「インドネシア」と聞くと日本の友人たちからは「インドネシアってアフリカにあるの?」という質問をもらったほどです。

同じアジアでも、中国や韓国などに比べまだまだ日本ではなじみの薄いインドネシアの文化。

本ページでは、知っておくべきインドネシア文化のタブーについて、主に職場でのタブーをご紹介します。

《プロフィール | 杏子スパルディ》

2003年、留学先のアメリカでインドネシア人たちと出会い在米期間中インドネシアコミュニティにどっぷりとハマる。帰国後インドネシアに単身渡り現地採用で外資・日系企業にて合計14年勤務。現在はフリーランスのインドネシア語コーチ、コラムニストとして活動中。インドネシア人夫と小学生の子供二人と西ジャワ州在住。

インドネシアの文化とは

インドネシアの文化で、日本のそれと最も異なるのはやはり宗教ではないでしょうか?

「多様性の中の統一」を唱えるパンチャシラ政策を掲げるインドネシアは、国民の全てが宗教の信仰をすることとし、他宗教間での違いを認め合い、共存するというルールがあります。

国が定める5つの宗教の内、国民の8割以上がイスラム教を信仰するインドネシアのムスリム人口は世界最大と言われています。

宗教は人々の生活の中にしみ込んだ文化となって、インドネシア人と関わる・接するのに気を遣うべきポイントとして外すことができない、と言えるでしょう。

インドネシア人ワーカーと働く際にも、覚えておくと円滑なコミュニケーションや効率的に業務を進めるために役立つと思います。ムスリムではないインドネシア人と接する時にも大部分は共通します。

インドネシアの文化の基本的なマナー

まずは、基本的なマナーについてです。イスラムでは左手は不浄とされています。何かを相手に渡す時や受け取る時に左手を使うことは失礼にあたります。

例えば書類を渡す時(受け取る時も)など、右手で渡すのがベターです。

相手が日本人であればこれをうっかり忘れてしまっても理解してくれるはずですが、ムスリム相手にサッとこのような気遣いができるのはとてもスマートだと思います。

実際インドネシア人たちも手がふさがっているなど、やむを得ず左手で何かを渡す場合は「左手ですみません」と一言添えます。

もう一つ基本的なことで、頭に触らない、というのもマナーです。

現代ではなかなかいないとは思いますが、上司が部下の頭を軽くでもポンっと叩いて叱る、などという行為は完全にタブーです。

食事や飲酒のタブー

次に食事や飲酒に関してです。イスラム教徒が豚肉を食べないことや飲酒をしないことは、個人の嗜好ではなく、信仰する唯一神により定められた決まり事です。

これを犯すことは彼らにとって「罪」になるのです。ちょっとくらい大丈夫だろう、と豚肉を食べさせたりお酒を飲ませるような行為は大変失礼です。

ムスリムといっても個人的なチョイスで豚肉やアルコールを食べたり飲んだりする人もいますが、そうでない人にそのような食事をすすめることは避けましょう。

インドネシア人の中には、イスラム教徒以外でもヒンドゥー教徒や仏教徒で牛肉を食べない人、菜食主義の人もいますし、カトリック教徒の中にはある特定の時期に肉を食べないなど、一般的な日本の食文化とは異なる部分が多々あります。

イスラム教の礼拝について

礼拝義務を無視した勤務形態もタブーです。

ムスリムは毎日決まった時間に5回の礼拝義務があります。インドネシア国内であれば会社に礼拝所や、礼拝前に身を清めるための清潔な場所を用意することは義務となっていますが、日本ではまだまだこのような文化は浸透していないと思います。

ムスリムのワーカー用に、清潔でプライベートな礼拝のためのスペースを確保してあげることをおすすめします。

また礼拝時間について、事前にワーカーと確認・共通認識を持っておくことも大事です。

インドネシア国内でも、礼拝時間(休憩時間)になっても長引く会議が終わらない、などの事例を見たことがありますが、礼拝時間をしっかりととってあげることはとても大切です。

礼拝の時間をとることにより「自分たちのことを理解してくれている」と彼らも認識すると思いますし、礼拝をしっかりすませて業務に集中してもらった方が仕事も効率的に進むはずです。

礼拝に行くといって業務をさぼる、というケースも残念ながら時々あるようですが、このようなことを減らすためにも、事前に礼拝時間についてはしっかりと話しあっておくことをお勧めします。

感情的にならないこと

最後に「感情的に怒らない」こと。インドネシア国内の企業で10年以上勤務してきましたが、多くの(日本人を含む)外国人が最も悩ましいと思うことかもしれません。

インドネシアには「ゴムの時間」が流れていることはすでに有名な話かもしれません。

予定が予定通りに進まないことは当たり前。できると答えたタスクも、蓋を開けてみたらやっぱりできません、なんてことも日常茶飯事なのです。

そんな中、イライラを募らせてついカーっと怒りたくなるところですが、感情的になることは実はインドネシアではタブーなのです。

毎年ラマダンといって、イスラム暦の9番目の月(通称断食月)には太陽が出ている間飲食をしない、ということは日本でも知られているかもしれません。

実はこの断食月には、感情的になり怒ったり泣いたりするのもいけないのです。

そんな文化があるインドネシアですから、職場で怒って怒鳴ってしまう人などは、厳しい言い方ですが、ちょっと軽蔑の目で見られてしまうこともあります。

インドネシアやムスリムに関わりがない職場だとしても、感情的になってしまう人はプロフェッショナルではない、と見られるかもしれませんね・・・。

まとめ

以上、5つのポイントにわけて、インドネシア人と働く上での文化のタブーについてご紹介しました。

全部に共通して言えることは、どの項目も事前に話し合い、認識を同じにし、どうしたらお互いにとって気持ちよくスムーズに仕事ができるかを、最初にしっかりと話しあい理解しておくことが最善の方法と言えるでしょう。