本記事では、インドネシア人である私がインドネシアと日本の文化の違いについてご紹介します。
また、某自動車部品メーカーでインドネシア人技能実習生受け入れを3年間担当した経験から、気付いた文化の違いについても紹介します。
これからインドネシアの人材採用や技能実習生受入れをご検討される方は、是非ご参考にしてください。
《プロフィール | ティナ》
インドネシア・マラン出身、日本在住歴12年。日本の文化や漫画が好きで、高校卒業後日本に留学。大学卒業後、某自動車部品メーカーでインドネシア人技能実習生受け入れを3年間担当。現在はフリーランスの翻訳者。
日本生活における文化の違い
皆さんもよく知っている「郷に入りては郷に従え」ということわざですが、実はインドネシアにも似たようなことわざがあります。
”Di mana bumi dipijak, di situ langit dijunjung”
「大地を踏むその場所の大空を尊重すべし」という意味です。
高校を卒業して、日本に留学した当初、私は文化や価値観の違いで驚かされ、苦労しました。
そのとき私は上記のことわざを心に刻み、時間とともに文化と価値観の違いを理解し、日本での生活にも慣れてきました。
留学から10年間以上経過し、今では、日本での感覚が体の隅々まで染みつきました。インドネシアに帰ったら、逆に日本での常識はインドネシアでの常識ではなくなるので、イライラすることが多いです。
では、今まで一番印象に残った文化の違いをピックアップしてご紹介していきます。
日常生活
友達作り
インドネシア人同士であれば、初対面でも年齢や仕事のような個人情報だけではなく、家族の問題についても簡単に質問でき、普通に相手も答えてくれます。
そのフランクな雰囲気から、簡単に新しい友達を作ることができます。
しかし、日本人からしたら、初めて会う人から挨拶され、プライベートな情報について色々質問されたら、もちろん抵抗感があるでしょう。
その文化の違いで日本人の友達を作りたいと思っていても、見えない厚い壁があるようで、中々簡単に友達を作ることができません。
会話のマナー
インドネシアでは会話をするときに、相手の目線に合わせて、話を最後まで聞いてから反応するのが一般的なマナーです。
逆に日本では、会話中に相手の話をちゃんと聞いていることを表現するため、相槌を打つ必要があります。
また「じーっ」と相手の目を見つめたら怖がられることもあると思います。
おもてなし
日本のどの店に入っても、店員さんがいつも「いらっしゃいませ」と暖かく歓迎して、席まで案内してくれます。また、注文をする前に無料の水をサービスしてくれます。
インドネシアでは、日本レストランではない限り、店員さんの暖かい挨拶はなく、お客様は適当に空いている席を選んで座ります。また、無料の水はもらえず、ミネラルウォーターのペットボトルを別に買う必要があります。
トイレ
一般的な家庭では、日本の和式トイレのようなトイレが使われています。
終わったら、トイレットペーパーで拭かず、インドネシア人は水を使って洗い流します。排泄後には手桶に水を汲み、それで流します。
また、ガソリンスタンドや観光地での公衆トイレはほとんど有料です。
トイレの入口に受付の人がいて、トイレに入る前に、お金(小便と大便の料金が異なり、平均100円から)を支払わないとトイレは利用できません。しかしながら有料でもトイレの中は綺麗な状態だとは限りません。
職場
社風
私が勤めた日本の会社では「上司が帰るまで帰れない」という社風が強く残っていました。
新人のとき、社風をまだ理解していなかった私は、いつも定時ですぐに帰りました。
その結果、面談のときに、上司から「残業がなくても、周りを見てちょっとでも会社に残れ!」と強く注意されたことは忘れません。
仕事がないのに、なぜ残らないといけないのか、ずっと不思議に思っていました。
インドネシアの場合、日本の正反対で、就業中にスマートフォンをいじる人や、お菓子を食べながら同僚とおしゃべりする人もいます。
もちろんその日の仕事を終わらせて、定時になったら全員すぐに帰ります。
評価制度
終身雇用が一般的である日本では、昔からの年功序列制度で年齢や勤続年数が高い社員ほど賃金が高く、新卒を大事に育てるイメージが強いです。
一方で、インドネシアでは最近、成果主義による評価基準が導入されています。年齢と勤続年数は関係なく、成果を上げれば給与アップや昇格のチャンスも大きいです。
また、日本と異なり新卒採用がないので、入社まもなく給与アップや昇格を求める人が多いです。希望が通らなかった場合、すぐ辞める人も多くいます。
特に若い世代は、社内でのキャリアアップよりも、転職をすることでより高い給与を得ることを期待しているようです。
技能実習生の受け入れから新たに気づいた文化の違い
某自動車部品メーカーで3年間インドネシア人技能実習生受け入れを担当し、55人の日常生活から仕事全般をサポートしました。
実習生たちのほとんどがジャカルタ出身でイスラム教です。年齢は10~40代で、男性45人、女性10人でした。
そのときの実習生たちへの対応で、気付いた文化の違いをご紹介します。
日常生活
言葉
私のサポートした企業では、入国前の日本語教育は実施しておらず、技能実習生が日本に到着後、自動車部品の製造ラインに配属される前に日本語学校にて3ヶ月間の日本語教育を受けていました。
ただ、3ヶ月ではすぐに日本語のひらがな・カタカナ・漢字を覚えるのが難しいという印象でした。
また、実習生たちはそれぞれの来日した目的が異なります。日本のことが好きで日本語を必死に勉強する人もいましたが、お金を稼ぐことだけが目的で、日本語習得のモチベーションが低い人もいました。
食事
最低限の調味料で素材の持ち味を活かす日本料理と違い、インドネシア料理の特徴は唐辛子などの香辛料を多く使います。
イスラム教の実習生たちはアルコールや豚肉が禁じられているため、買い物の際にはハラール(イスラム教の教えに則って許されるもの)スーパーを案内しました。
また、近所のスーパーで買い物する場合はアルコールや豚の成分が含まれる添加物等も避けるように指導をしました。
普段実習生たちは自炊しているので特に問題ありませんが、外食のときにトラブルが発生したことがあります。
会社のイベントで和食店に行った際に、実習生たちが寮から持ってきたサンバル(辛味調味料)やケチャップを出された料理にたくさんかけて食べました。
辛いものが好きなインドネシア人にとっては日本食の味は少し物足りないのです。実習生たちの食べ方を見かけた店主がものすごく怒って、「もう食べに来ないでください!」と日本人スタッフが注意したそうです。
その事件をきっかけに、実習生たちには日本食に対する理解やマナーについて学んでもらいました。
ゴミ
ゴミの分別のルールがたくさんある日本と違い、インドネシアでは分別ルールがありません。ゴミを何でもまとめて捨てることに慣れていた実習生たちに正しいゴミの捨て方を教えるのは大変でした。
最初の頃は、生ごみの中に一緒にペットボトルや缶などを捨てていることが頻繫にあり、業者さんに回収されず、放置されたこともありました。
ある日、寮長から寮の廊下の前にある排水溝が詰まっているという連絡が入りました。
髪の毛がいっぱい詰まったようです。原因を調べた結果、なんと男性の実習生たちは部屋の廊下で髪の毛を切り、落ちた髪の毛をそのまま排水溝に捨てたのです。
美容室や床屋に行かず、散髪が上手な友達にカットを頼むことは日本では珍しいことでしょう。
職場
コミュニケーション
インドネシア人はフレンドリーな人が多く、周りの人にすぐ何でも相談できる性格です。
しかし、なんでも相談するというのはいいことばかりではありません。
給料日に実習生たちは給料明細書を見せ合います。そのため、残業代が多く、自分より給料が高い人に不公平感を感じて、残業が多いラインに異動したいという希望者が多く出ました。
もちろん、元々配属されたラインからの異動は難しいため、希望通りにいかない実習生が仕事に対するやる気をなくし、欠勤が増えることもありました。
そういった実習生たちを納得させるために日本人の上司はすごく苦労していたと思います。
ルール・マナー
インドネシア人は仕事よりも宗教と家族の優先度が高いです。
そのため、イード・アル・フィトル(断食月の終了を祝う大祭)のようなイスラム教の祝日には休みを取りたい実習生が多いです。
他にも母国にいる家族が病気になったら、家族の様子を見守りたいという理由で有給を取る実習生もいます。
また、インドネシア人は「言われたことを100%やって、自分の担当業務さえ終わってしまえば、まだ就業時間内でも、他にすべき事を探さずに過ごす」という意識が強いです。
やはり、プライベートよりも仕事の優先度が高い日本人の上司がこういった実習生たちの対応に頭をかかえることも少なくはありませんでした。
食事
工場内には食堂がありましたが、ハラールメニューに対応していなかったので、実習生たちは自分で作った弁当を食べていました。
実習生たちにも食堂で食事をしてもらうため、毎週の金曜日に特別にハラールのインドネシア料理を提供していました。
実習生だけではなく、日本人の従業員も食べることができるので、インドネシアの文化を理解するとても良い機会になっていました。
宗教
イスラム教は一日5回のお祈りが義務付けられています。工場内にお祈りの場が特別に設けられましたので、お祈りのためにわざわざ寮に戻る必要はありません。
イスラム教では女性は髪の毛や肌を露出してはいけないという教えがあります。そのためヒジャブと呼ばれる髪の毛を隠すためのスカーフを巻き、長袖の服とロングスカートやズボンを着ています。
しかし、安全性の問題で仕事中にはヒジャブの着用は禁止されていました。その教えに配慮して、機械に巻き込まれないよう、しっかり頭に密着するヒジャブであれば、着用が許可されるようになりました。
まとめ
どの国にも独自の文化と習慣があります。お互いの文化の違いを尊重し、理解し合うことで誤解を招かず、良い関係を築くことができます。
上記に述べたこと以外、まだまだたくさんの文化の違いがありますが、少しでも参考になれば幸いです。