【現地在住者が解説】インドネシアの物価について

インドネシアはアジアの中でも急成長中の国の一つでもあり、インフレ率は毎年数%ずつ上昇しており、2022年は4.6%です。

給与水準も毎年上昇していますが、首都ジャカルタでの生活物価もかなり上がってきており、今年は、ガソリン代の値上げも加わり、インドネシア人の生活にも大きな影響が出ています。

都市部と地方の物価差は大きく、単純にインドネシアの物価として語ることが難しいですが、今回はジャカルタの例を中心にインドネシアの物価についてご紹介したいと思います。

《プロフィール | 長野綾子(ながのあやこ)》
インドネシア在住17年。
日本語教師として来イ、その後インドネシア大学BIPA留学。2005年より日系グローバル人材紹介&ビジネスコンサルティング会社にてコンサルタントとして勤務。

家賃

ジャカルタ中心部の住まいはコス(KOST)と言われる住宅とマンション(インドネシアでは一般的にアパートと言われます)が中心になります。

コスは一人暮らし用の賃貸住宅で、2~3階建ての小規模なアパートのような住まいで地方出身の人や学生はこのコスに住むことが多くなります。

コスとマンションの大きな違いは部屋にキッチンが付いているかいないか、賃貸契約が月極か長期契約か、光熱費・水・ネットが含まれているかいないかの差になります。

ジャカルタ南部は私立(中・高額学費)の学校やインターナショナルスクールが多く、ラグジュアリーアパートメントやタウンハウスが多いエリアです。

年間契約をする場合は1年分の家賃前払いという制度が一般的で、入居時にはまとまった資金が必要になります。途中退居しても支払った家賃は戻らないので注意が必要です。

コスアパートメントアパートメント(ラグジュアリー)一軒家
エリアジャカルタ中心部
大学が多いエリア
若い単身の人
学生
ジャカルタ中心部
ジャカルタ郊外
単身の人
学生
家族
ジャカルタ中心部
ジャカルタ南
ジャカルタ北(新興住宅地)
駐在員や外国人
家族
 
ジャカルタ郊外
ジャカルタ南
家族
*外国人は欧米人が多い。日本人はセキュリティの関係であまり好まない傾向
住民層若い単身の人
学生
単身の人
学生
家族
駐在員や外国人
家族
家族
*外国人は欧米人が多い。日本人はセキュリティの関係であまり好まない傾向
家賃(月)2万~8万円5万~15万円15万~50万円5万~20万円
契約形態1カ月1カ月~1年1年~2年1年~2年
水道光熱費家賃込み水:1千~3千円
電気:3千~1万円
水:3~1万円
電気:1万~3万円
水:5~1万円
電気:2千円~1.5万円
インターネットWIFI込みインターネットとケーブルテレビ
5千円~1万円
インターネットとケーブルテレビ
5千円~1万円
インターネットとケーブルテレビ
5千円~1万円
掃除・洗濯家賃込みなしなし
*サービスアパートメントのみ2万~3万円。朝食を付けられるところもある
なし
駐車場家賃込み
*別料金のところもあり2千程度
家賃込み
*部屋数に応じて駐車場の数が異なる。1~2ベッドルームで1台分、3ベッドルーム以上で2台分。
家賃込み
*部屋数に応じて駐車場の数が異なる。1~2ベッドルームで1台分、3ベッドルーム以上で2台分。
家賃込み
*通常ガレージがあり1台~2代は駐車可

交通費

ジャカルタ中心部のみMRTが開通していますが、まだ範囲が狭いのでバス、タクシー、アプリ配車サービス(車とバイク)などが中心になります。

ジャカルタ中心部は渋滞緩和のため、自家用車のみ奇数偶数制度が実施されています。日付が偶数の場合はナンバープレートの下1桁が偶数しか通れないというルールです(土日祝は除く)。なお、タクシーとバイクは規制対象外です。

MRTとタクシーは距離に応じた価格設定ですが、配車サービスの場合は、渋滞時間とオーダーの増減により費用が異なります。

通常の30分程度の乗車時間を基準にすると以下のとおりになります。なお、配車サービスは、オーダー時に運賃が固定されます。

MRTバス配車サービス(バイク)配車サービス(車)タクシー
運賃100円~130円30円~130円150円~300円
*渋滞・オーダーが多い時間帯は10%~50%増し
200円~500円
*渋滞・オーダーが多い時間帯は10%~200%増し
200円~500円
*初乗り80円
*距離と乗車時間によりメーター加算される

食費

インドネシアはもともと外食文化で、自炊する人は少ない傾向です。特に単身者とコス住まいの人は外食、持ち帰り、オーダーをすることが多いです。

インドネシアのデリバリーサービスはGrabとGojekが有名で、デリバリー料金は5km圏内であれば50円~150円ぐらいですが、割引などを利用するとデリバリー料金が無料になることも多いです。

コンビニなどで購入すると、ミネラルウォーターは30円~150円、ソフトドリンクは50円~100円ぐらい。デリバリーピザ(PizzahutやDominoPizza)は500円~1,000円ぐらいと日本に比べても安いです。

都市部だけになりますが、ファミリーマートやローソンも店舗数を増やしており便利になりましたが、コロナ後は、営業時間が24時間ではなくなり、7時~22時の営業時間になっているので注意が必要です。

高級なレストランもコロナの期間からデリバリーに対応しています。

屋台・食堂レストランチェーン店レストラン(日本食、ホテルなど)
費用(1人)100円~300円300円~1,000円1,500円~数万円

医療費

インドネシアの医療費は高い国と言えます。低・中所得者はPuskesmasと言われる国営のクリニックを使うことが多く、高所得者・外国人以上は高めの国営の総合病院、もしくは民間のクリニックや専門病院、総合病院を使う人がほとんどです。

インドネシアはBPJSという社会保険があり、低所得者はほぼ無料で医療を受けられる制度もありますが、BPJSは国営の医療機関しか使えないのと、運用が複雑なので中所得者以上の人は使うことが少ないようです。

BPJSは、企業に勤める人には加入義務があります(保険料は会社負担分と個人負担分あり)。

民間のクリニックや病院で風邪・腹痛などの軽い病気で診察を受けると、診察費用が5,000円~1万円ぐらい、薬代が別途1,000円~2,000円ほどかかることが多いです。

また、3日~1週間ほどの入院が必要な場合は10万円~数百万と病院によりかなり医療費が異なります。

高所得者は民間の保険に加入している人が多いので保険でカバーされます。

海外旅行傷害保険(年間の保険掛け金が10万~20万円ぐらい)に加入していると、キャッシュレスで医療を受けられるようになっており保障額も高額で、インドネシアで治療できない場合は海外搬送制度もあり安心です。

教育費

インドネシアの義務教育は6・3・3と基本的に日本と同じです。

公立は無料とうたっていますが実際のところは制服代、教科書代、設備費、寄付金などの費用が必要で、特に地方では学校にいけない子供もまだいるようです。

私立の学校は、教育制度や設備によりピンキリなのですが、インドネシア語教育の学校で入学金が数万円+月2千~1万円ぐらい、インドネシアの学校で英語教育の学校(セミインター)だと入学金20万~100万円+月3万~15万円ぐらい、インターナショナルスクールは入学金60万~150万円+月15万~30万円ほどです。

中所得者以上は、基本的に私立学校を選ぶことが多く学費もかなり高いと言えます。

一部の公立学校はエリート校になっており(かなり狭き門です)将来の国家公務員や会社の役職者を多く輩出しています。

高所得者は小中高とセミインター・インターの英語教育を選び、大学は海外に留学する傾向が高いです。

国家公務員になるためには、インドネシア語での高い教育を受けている必要があり、海外留学経験者は帰国後起業するか外資系の会社、インドネシアの大手複合会社などに就職するケースが多いです。

その他

●たばこ

インドネシアは喫煙者が多い国で、1箱200円ぐらい。少しずつ値上げはしていますがまだ安いと言えます。

●酒

イスラム教徒が多い国ですが、国産のお酒も製造しています。国産ビール(Bintang、ハイネケン、バリハイなど)で200円~300円ぐらい、国産ワイン・焼酎・ウイスキーは1,500円~3,000円ぐらい。

酒税が高いため、輸入のお酒は国産の2~3倍で売られていること多いです。

●バイク・車

インドネシアには日系・中国系・韓国系のバイクと車の製造会社が多く進出しています。

庶民にとっては高級品ではありますが、インフラが整っていないジャカルタでは日常の足が必要なため少し無理なローンを組んででも購入する人が多いです。

日系のバイクで12万~15万円、一般的な車は120万~800万円ぐらい。日系の中高級車や外車は800万~1500万円ほど。また車の税金は高く年間5万円~15万円ほど(車のグレードにより)ですが。中所得者以上はバイクから車に乗り換える人も増えています。

まとめ

同じようにジャカルタで生活をしていても、衣食住&教育の質により生活物価の幅がかなりあります。

最低賃金5万円ぐらいで生活をしている人もいれば、数十万数百万という高い水準の生活を送る人もいます。インドネシアの場合ひとまとめに物価の話はかなり難しいのですが参考になれば幸です。