本記事では、一時帰国する特定技能外国人が、脱退一時金を申請する際に必要な手続きについて紹介します。
特に、数週間のみの一時帰国の間に、脱退一時金の申請をする予定の特定技能外国人には有益な内容です。
これから帰国する特定技能外国人の手続きサポートをする方は、本記事の内容をぜひ参考にして下さい。
脱退一時金とは
脱退一時金とは、外国人が支払った国民年金・厚生年金の一部を返還請求して受け取ることのできる「脱退一時金請求制度」で受け取れるお金のことです。
最長で、既に支払った5年分(60ヶ月分)の年金を返還請求することができます。
最長で5年分と定められているとおり、例えば6年分の支払いがあったとしても返還請求できるのは5年分のみです。
年金の支払い金額にも拠りますが、数十万円の金額を受け取ることができるため、特定技能外国人にとってはともて大切な制度です。
脱退一時金を申請するための要件
脱退一時金を申請するための必要要件は次の6つです。
- 日本国籍を保有していないこと
- 国民年金・厚生年金の被保険者でないこと
- 国民年金・厚生年金に6ヶ月以上加入していること
- 年金の受給資格を取得したことがないこと
- 日本国内に住所がないこと
- 出国日より2年以内
特に注意が必要なのは、④⑤の手続きです。
2つの注意点を紹介します。
④年金の受給資格を取得したことがないこと
老齢年金など全ての日本の年金制度の受給資格を取得したことがない外国人のみが脱退一時金の申請をすることができます。
⑤日本国内に住所がないこと
脱退一時金の申請書類が日本年金機構へ到着した時点には、国外転出の手続きが完了している必要があります。
脱退一時金の申請手続き
本記事では、特定技能外国人が数週間程度の一時帰国をする間に、脱退一時金の手続きをするケースを想定した申請手続きを紹介します。
脱退一時金の申請手続きは次のステップで行います。
- 脱退一時金の振込口座を用意
- 脱退一時金の申請書類を用意
- 退社手続き
- 市役所での国外転出手続き
- 申請書類を日本で郵送
- 脱退一時金の受け取り
- 脱退一時金支給決定通知書の受け取り
➀脱退一時金の振込口座を用意
脱退一時金を受け取るための口座を用意します。
口座には、海外口座と日本国内の口座のどちらも使うことができ、海外口座の場合は、「脱退一時金請求書」の「脱退一時金振込先口座」の欄に銀行の証明印が必要となります。
また、日本国内の口座を使う場合は、「銀行口座の写し」を添付するのみで足ります。
ただし、ゆうちょ銀行の口座は使用できない点と、必ず本人名義の口座である必要がある点には注意して下さい。
②脱退一時金の申請書類を用意
脱退一時金の申請書類を用意します。
必要書類については、コチラで紹介しております。
➂退社手続き
脱退一時金の申請をするためには、厚生年金を止める必要があるため、退社手続きが必要です。
④市役所での国外転出手続き
市役所で国外転出の手続きをすることで、脱退一時金の申請要件を満たすことができます。
⑤申請書類を日本で郵送
短期間で脱退一時金の手続きを済ませるためには、日本国内で申請書類を年金事務所へ郵送することをおすすめします。
市役所での国外転出の手続きを済ませた後であれば、特定技能外国人が日本から出国する前でも脱退一時金の申請をすることが認められます。
この場合、申請書類が年金事務所へ到着する時点には、国外転出の手続きが完了していることが条件です。
日本で申請することで、海外から必要書類を郵送して申請する場合と比較しても、書類が年金事務所へ到着するまでの時間を大幅に節約することが可能です。
⑥脱退一時金の受け取り
脱退一時金の申請が年金事務所へ到着(受理)して、4ヶ月ほどを目安として、脱退一時金の指定口座への送金が行われます。
⑦脱退一時金支給決定通知書の受け取り
脱退一時金の送金と同時に、「脱退一時金請求書」に記載した「離日後の住所」へ脱退一時金支給決定通知書が郵送されます。
下記の記事で詳しく紹介しているとおり、脱退一時金支給決定通知書は、脱退一時金から控除される所得税を還付請求するのに必要であるため、大事に保管しておきましょう。
脱退一時金の申請書類
脱退一時金の申請書類は次のとおりです。
- 脱退一時金請求書
- 国外転出をした証明書類
- 脱退一時金を受け取る口座情報書類
- 基礎年金番号がわかる書類
それぞれ紹介します。
〇脱退一時金請求書
脱退一時金請求書は、年金事務所のホームページより各国語版でダウンロード可能です。
〇国外転出をした証明書類
パスポートの出国スタンプページや住民票の除票の写しなどが該当します。
ただし、出国前に市役所で転出届を提出した場合は、年金事務所が市役所のシステムより、国外転出の情報確認をすることができるため、証明書類の提出は不要です。
〇脱退一時金を受け取る口座情報書類
日本国内または海外の口座情報を脱退一時金申請書へ記入する必要があります。
また、添付資料として、日本国内の口座を使う場合は、通帳の写しが必要です。
他方で、海外の口座を使う場合は、「脱退一時金請求書」の「脱退一時金振込先口座」の欄に銀行の証明印が必要となります。
そのため、海外口座を使用する場合は、前もって準備をして、銀行の証明印を押した脱退一時金請求書を海外から日本へ郵送してもらう必要があります。
〇年金手帳(原本)
基礎年金番号通知書または年金手帳(原本)を添付する必要があります。
入管への必要な手続き
脱退一時金を申請するためには一旦、退社処理(雇用契約の終了)をする必要があるため、「特定技能雇用契約に係る届出書」を提出する必要があります。
また再入国後は、新しい雇用契約書とともに、「特定技能雇用契約に係る届出書」を提出する必要があります。
注意点
10年分「技能実習(5年)・特定技能(5年)」の脱退一時金を請求する方法
現在の制度では、技能実習で最長5年、特定技能でも最長5年の間、日本で就労することが認められます。
そのため、技能実習と特定技能を共に最長期間終えた外国人が、脱退一時金を一度だけ請求すると、5年より多い分の年金支払い分は脱退一時金として受け取ることができません。
脱退一時金を多く受け取るためには、技能実習を終えた後に、一時帰国して約5年分の脱退一時金請求をした後に、特定技能外国人として再就労することで、全ての年金を漏れなく請求することができます。
特定技能の就労期間(5年間)を終えた後は、再度、脱退一時金の請求をすることで、10年分の脱退一時金受け取りが可能です。
脱退一時金の請求は実質2回に分けて行う
脱退一時金の最初の申請では、本来受け取れる金額の80%のみの受け取りしかできません。
理由は、残りの20%の金額は所得税として源泉徴収されてしまうためです。
ただし、確定申告をすることで、この源泉徴収された20%の金額を受け取ることができます。
なお、日本に戻ってこない外国人の確定申告については、選出した日本にいる「納税管理人」が代行して行います。
納税管理人が代行した場合、還付金についても納税管理人の口座へ振り込みされます。
他方で、本記事で想定しているように一時帰国をする外国人については、納税管理人の選出は不要です。
確定申告を特定技能外国人が自身で行うことができます。
脱退一時金の申請手続きにかかる期間
脱退一時金の申請~受け取りまでにかかる期間は約4ヶ月程度とされています。
ただし、申請書類に不備のある場合は、追加書類の提出をなど求められる場合もあるため、書類に不備があると脱退一時金の受け取りは遅れることになります。
また、脱退一時金の受け取り自体は、既に特定技能外国人が日本にいる場合でも、海外口座だけでなく日本国内の本人口座を指定することもできます。
脱退一時金の申請状況の確認方法
脱退一時金の申請状況は、電話で確認することができます。
年金事務所問い合わせ番号:03-6700-1165
日本人の方が代わりに問い合わせをする場合は、電話で下記の情報を伝える必要があります。
〇電話する日本人の情報
- 基礎年金番号
- 氏名
- 住所
- 生年月日
〇特定技能外国人の情報
- 基礎年金番号
- 氏名
- 国外転出直前の日本の住所
- 生年月日
- 日本出国日(転出日)
年金への再加入可能時期
脱退一時金の申請が受理される前に、年金へ再加入してしまうとタイミングによっては、脱退一時金の還付が受けられない可能性があります。
そのため、特定技能外国人が数週間程度で日本へ帰国する場合には、脱退一時金の申請書類が確実に受理されたことを確認した上で、年金への再加入をして下さい。
脱退一時金請求書に記載する「離日後の住所」
脱退一時金請求書に記載する離日後の住所の欄には、必ず日本国外の住所を記入する必要があります。
たとえ一時帰国の場合であっても、日本の住所を記入した場合は脱退一時金が支給されない可能性があるため、注意して下さい。
まとめ
脱退一時金は最長でも5年分(60ヶ月分)しか請求できないため、外国人が取り漏れることの無いようにサポートすることが必要となります。
今後、ますます増えるであろう特定技能外国人の一時国の際には、確実に脱退一時金の受け取りができるようにサポートすることが肝心です。