インドネシア人を採用するメリット・デメリット

外国人採用を検討している企業にとって、良い人材を確保できるかどうかは、企業の将来性を左右するほど大切なことです。

海外人材の中でも、若い労働力を抱えるインドネシアは、豊富な人材が揃っていると注目を集めています。

そこで本記事では、インドネシアの国民性や文化を鑑みつつ、インドネシア人を採用するメリットとデメリットについて詳しくご紹介します。

《プロフィール | さのゆうき》

インドネシア在住歴17年。外資系ホテルでゲストリレーションズとして勤務した後、フリーランスのライターおよび翻訳家に転身。 Webメディアはもちろん、紙媒体の仕事も請負っている。インドネシア語は第二の母国語。

インドネシア人を採用する7つのメリットとは?

日本とは異なる宗教や風習を持つインドネシアですが、インドネシア人は日本人と親和性が高い民族です。

インドネシア人を採用する主なメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?

臨機応変な対応ができる

インドネシアでは四角四面な対応ではなく、臨機応変な対応ができる人材を確保できます。

感受性が高く、情に厚い国民性からか、困っている人を放っておけないインドネシア人。

インドネシア人は顧客の心情に寄り添い、対応可能な範囲で解決策を示す特質を有しています。

臨機応変な対応力を持っているということは、どんなシーンにおいても適切な状況判断が下せるということです。また、臨機応変な対応に慣れている人は、相手の意見を尊重し、受け入れることができます。

上下関係を大切にする

年配者に敬意を払う文化を持つインドネシア人は、上下関係を大切にします。

そのため、インドネシア人は、上下関係を重んじる日本の企業にも馴染みやすいでしょう。

年功序列的な上下関係はもちろん、スキルや経験値における上下関係も受け入れることができるので、職場で良い人間関係を築けます。

穏やかに仕事に取り組む

インドネシア人は感情のコントロールに長けているため、いつでも穏やかに仕事に取り組みます。

その背景には、インドネシア人の信心深さが大きく関係しているといえるでしょう。イスラム教徒が国全体の約87%、キリスト教徒が約9%、ヒンドゥー教徒が約2%を占めるインドネシアでは、宗教の教えを生活の中で実践している人が多く見られます。

イスラム教徒の聖典であるコーランには、怒りをコントロールする者は神の恵みが与えられると記されています。

また、キリスト教徒もヒンドゥー教徒も平和を愛し、他の人とのいさかいを良しとしません。ですから、たとえ仕事中にトラブルがあったとしても、穏やかに対処します。

協調性がある

異なる個性が集まる職場でスムーズに仕事をするには、協調性が欠かせません。

日本人と同じく「和」を大切にする文化を持つインドネシア人は、協調性を持って働くことが得意です。

日本人特有の能力だと考えられている空気を読む力や忖度ですが、実はインドネシア人も得意な人が多いといわれています。

組織行動学の専門家であるエリン・メイヤー氏が行った異文化理解に関する研究(著書「異文化理解力」参照)では、日本とインドネシアは共にハイコンテクスト文化(高文脈文化)の国に位置付けられました。

ハイコンテクスト文化とは、メッセージを伝達する際に言語外の情報に頼ることが多い文化のことです。

場の空気を読んだり、暗黙の了解が理解できたり、曖昧さを良しとしたりするインドネシア人は、日本人と意思の疎通を図りやすいでしょう。

コミュニケーション能力が高い

インドネシア人は、コミュニケーション能力にも大変優れています。陽気で明るい性格の人が多く、人付き合いが上手です。

オープンマインドなため、人との垣根が低く、初対面の人とでもすぐに打ち解ける性質を持っています。

意見を交換するのが好きで、話し合いが苦手だという人はほとんどいません。日本には井戸端会議がありますが、インドネシアには「Nongkrong(ノンクロン)」と呼ばれるコミュニケーション文化があります。

ノンクロンする(とくに目的もなく人と集まりあって共に時間を過ごす)ことが大好きなインドネシアの人々は、社交性が高く、柔軟な考え方をする人が多いので、職場の対人関係で悩むことが少ないようです。

日本語習得に積極的

日本語の教育に積極的なインドネシアでは、日本語学習者数が多くいます。世界的に見ても、インドネシアは中国に次ぐ日本語学習者数を誇っており、日本語を習得したいと願っている人が多くいる国です。

日本で働く人材には、日本語スキルの高さが求められるのは当然のこと。インドネシアの人材は日本語の習得に積極的ですから、日本で働く人材として最適です。

就労意欲が高い

経済成長が著しいインドネシアですが、平均年収・平均月収ともに日本の約10分の1、もしくは12分の1ともいわれています。

そのため、給与面で自国より待遇の良い日本で働くことを希望している人が大勢いる状態です。

雇用が決まれば、大半のインドネシア人はできるだけ長く日本で働きたいと願っていますから、就労意欲が高い人材が揃います。

インドネシア人を採用するデメリット

メリットしかないように思えるインドネシア人の採用ですが、何事にも良い面と悪い面があるものです。ここでは、どのようなデメリットがあるのかについてご紹介します。

宗教・家庭を優先する

多くのインドネシア人にとって、宗教は生き方そのものです。生活が宗教儀式を中心に回っているため、仕事の優先順位はそれほど高くありません。

もちろん中には、宗教に左右されない暮らしをしている人もいますが、そのような人たちは「KTP Muslim(名目上のイスラム教徒)」や「KTP Kristen(名目上のキリスト教徒)」などと呼ばれ、インドネシアでは良い顔をされません。

また、仕事よりも家庭を優先させるのも、インドネシア人の特徴です。ただし、日本に仕事をしに来たのであれば、環境が大きく異なりますから、仕事中心の生活にならざるを得ないでしょう。

マイペースな人が多い

何が起こっても「Tidak apa-apa.(大丈夫)」や「Apa boleh buat.(仕方がない)」で済ませてしまうインドネシア人は、マイペースな人が多いようです。

雨季と乾季があるとはいえ、常夏の国インドネシアでは果物が良く育ち、あくせく働かなくても食べるものに困りません。

また、運命論者が多いイスラム教徒も、カルマや宿命を信じているヒンドゥー教徒も「すべてのことは神によって定められているので、なるようにしかならない」と考えているのだそう。

このような背景があるためか、全体的にのんびりした人が多いように見受けられます。

任された仕事しかしない傾向がある

怒るのが苦手なインドネシア人は、怒られるのも苦手です。そのためか、余計なことをして怒られたくないという気持ちが働き、率先して仕事をするのを避けることもしばしば。

空気を読むことに長けたインドネシア人ですが、仕事に関しては自分の担当の仕事しか行わず、指示を待つ傾向があります。

しかしながら、日本で仕事の経験を積むにつれて、自ら進んで仕事ができるようになる可能性は大きいといえるでしょう。

インドネシア人を採用するメリットは大きい

明るく陽気なイメージのインドネシア人ですが、なにがなんでも我を通すような強引さは少なく、周囲に心遣いや気配りができる人が多いです。

コミュニケーション上手で穏やかなため、職場で良好な人間関係を築くことができます。職場でスムーズな人間関係を築ける人材は、企業にとって宝のように貴重な人材となるでしょう。

海外人材もさまざまですが、日本人とは一見正反対のようでいて、似ているところがあるインドネシア人を採用するメリットは大きいのではないでしょうか。